ステップ4.恐れずに、徹底して、自分自身の棚卸しを行い、それを表に作った。
ステップ5.神に対し、自分に対し、そしてもう一人の人に対して、自分の過ちの本質をありのままに認めた。
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棚卸しとは、苦しんできた過去の生き方や、いま現在の問題の整理をともに行っていくための一つの方法です。
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棚卸し表とは?
「棚卸し表」には様々な種類のものがあります。どれが正解というわけではありませんが、以下では棚卸し方法として一般的な『アルコホーリクス・アノニマス(通称ビックブック)』の94ページに書かれた表をベースとし、棚卸しのやり方について具体的に説明します。
なお、ここで示された棚卸し表や棚卸しのやり方はあくまで一例であり、HA全体を代表した意見でも、どこかのグループを代表した意見でもありません。ここで提示したものとは異なる棚卸し表や棚卸しのやり方も存在します。したがって、ここに書かれていることを唯一絶対の正解や目的とするのではなく、あくまで参考として、数多ある手段のなかの一つとして理解いただくようにしてください。
棚卸し表の種類
棚卸し表は全部で3種類あります。それぞれ「恨みのリスト」「恐れのリスト」「傷つけた人(埋め合わせ)のリスト」です。
「恨みのリスト」では、自分が恨んだり、許せなかったり、嫌悪感を抱いたりする相手や出来事、しきたりや原理などを記入し、そのような恨みの感情に自分がなぜ囚われるのか/自分の中の一部としてある恨みの感情に今後どのような責任を果たせばいいのかを検討していきます。
「恐れのリスト」では、自分が恐れたり、不安になったり、プレッシャーを感じたりする相手や出来事、しきたりや原理などを記入し、そのような恐れの感情に自分がなぜ囚われるのか/自分の中の一部としてある恐れの感情に今後どのような責任を果たせばいいのかを検討していきます。
「傷つけた人(埋め合わせ)のリスト」では、自分が傷つけたり、罪悪感や申し訳なさを感じたり、後悔の念(すればよかった/しなければよかったという感情)を抱いている相手を記入し、(相手や自分を)傷つけるような言動をとるに至ったのはなぜだったのか/これからの自分がどのような生き方(=回復という責任)を果たせばいいのかを検討していきます。最後に作るこの表が、「埋め合わせ」(ステップ8・9)をすることに直結していきます。
棚卸し表の説明
※必ず、表の実物を手元に置きながら以下の説明を読んでください
棚卸し表は、全部で4列によって成り立っています。
第一列では、自分の感情の対象となっているもの(相手、しきたり、原理)を書きます。
第二列では、自分の感情の原因となった出来事や行動、自分の感情の本質を書きます。
第三列では、自分の何が(どのような基本本能が)傷つけられたことで、第二列のような感情が生まれたのかを検討します。
そして第四列では、自分の「生きづらさ(過ち・欠点・短所)の本質」を認めて、自分の生きづらさに対して、これからの自分がどのような責任を果たせばいいのかを検討します。
棚卸し表の第三列の説明
棚卸し表では、人間に備わっている基本本能が3種類あると考えます。それぞれ「共存(社会的)本能」「安全本能」「性本能」です。これら基本本能が傷つけられることによって、「恨み」「恐れ」「相手を傷つける言動」が人間のなかに生まれると考えます。
「自分のどんな本能が傷つけられた結果、恨みや恐れを抱いたり相手を傷つける言動をとることになってしまったのだろうか?」という問いかけをすることが第三列の目的です。
【共存本能(社会的本能)】
①自尊心
「尊敬されたり尊敬できる自分でありたい!」という気持ち
「恥ずかしい思いや惨めな思いをしたくない!」という気持ち
自己評価
「評価される存在でありたい!」という気持ち
「評価されない存在にはなりたくない!」という気持ち
②対人関係
「他人から受け入れられたい(自分を認めてほしい!)」という気持ち
「他人を受け入れたい(相手を信頼したい!)」という気持ち
【安全本能】
①物質面
生命/生存の維持に関わるような安全状況(金銭面、身体面など)
②感情面
自分の安心感
【性本能】
①公認の性関係
性愛の感情のうち、社会通念上、許容されているもの
②秘密の性関係
性愛の感情のうち、社会通念上、許容されていないもの
棚卸し表の第四列の説明
棚卸し表では、人間に備わっている基本本能が傷つけられることで「恨み」「恐れ」「相手を傷つける言動」が人間のなかに生まれると考えます。しかし、たとえ自分自身が傷つけられたのだとしても、その事実を認めて適切な対処方法を検討していくことによって、過去の傷に囚われず(コントロールされず)に生きていく/過去の傷を自分の人生の財産として生きていくという「回復という責任」を果たすことを12ステップは提案します。
第四列にある《生きづらさの本質》の各項目(自己中心性、不正直、恐れ、配慮・関心の欠如など)は、過去の傷に過剰に囚われたり、過去の傷にコントロールされた生きづらい生き方を招くような「性格上の欠点」です。私たちの生きづらさは、この性格上の欠点によってより増幅・悪化していき、最終的には自分の力ではもちろんのこと、周りの人の力を借りたとしても手に負えないもの(無力)になっていきます。
「過去の傷に過剰に囚われたりそれにコントロールされてしまうのは、自分にどういう《生きづらさの本質》があるからなのだろうか?」という問いかけをすることが第四列の目的です。具体的な問いかけは、以下のようになります。
【自己中心性・利己心】
「自分に変えられないもの(自分自身の特性や相手の問題)」を受け容れることを拒絶していなかったか?自分の思いや都合に合わせて相手や周りを変えようとしていなかったか?相手や周りが変わることを内心密かに期待していなかったか?
【不正直】
「自分に変えられないもの(自分自身の特性や相手の問題)」が変えられないということを本当に理解し納得すること(腑に落とすこと)ができていたか?誰かに相談して一緒に考える可能性や余地があったのに、自分の頭や胸の内にだけ留めて済ませようとしていなかったか?
【身勝手】
「自分の力でなんとしても変えないといけない」という強迫観念に囚われていなかったか?自分に非があることを認めなくて済むように、自分が傷つけられる状況を自分自身でも作っていなかったか?「変えられるものを変える」ことでは満足できず、過活動になってはいなかったか?
【恐れ】
「自分の力では何も変えられない」という無力感に囚われていなかったか?自分が傷つけられるようなことがないように、自分が何もしない(できない)状況を正当化していなかったか?「変えられるものを変える」ためにできる行動を、先延ばしにしてこなかったか?
【配慮・関心の欠如】
(自分自身と相手に対して)何かもっとよくやれたはずのことはなかったか?人の役に立つために自分に何ができるか考えたか?
これら《生きづらさの本質》であるところの性格上の欠点からの解放を願い、それに代わる新しい生き方(寛大な心、正直さ、謙虚さ、勇気、思いやりなど)の実現を今日一日意識していくことが「回復という責任」を果たすことです。ここで提案される回復という責任については、棚卸し表を一緒に点検してくれるスポンサーの体験談と提案がヒントになります。
棚卸し表を書く時の注意点
棚卸し表を書く時の最大の注意点(=絶対に守ってほしいこと)は、「縦に、素早く、簡潔に」書くということです。そうしないで「横に、じっくり、詳細に」書くというやり方をすると、自分の感情によりいっそう囚われてしまい棚卸しをすることがむしろ逆効果になります。一つ一つの項目(横一列)は、自分独りの力のみで向き合う必要性はまったくありません。むしろ、スポンサーのサポートのもとで点検していくことが望ましいです。
棚卸しでスポンサーがすることとは?
スポンサーは、棚卸し表を書いた人(スポンシー)が第一列から第四列までの横一列を適切に理解し、「回復という責任」を日々果たせるよう適切なサポートをする役割を担います。
スポンサーの役割は、①スポンシーの抱える傷の本質を理解すること(第一列から第三列まで)、②スポンシーの生きづらさの本質を特定し新しい生き方の方向性を提示すること(第四列)、などがあります。
なお、スポンシーの傷があまりにも深いもの(言語化が困難であったり、言語化しようとすると身体的な症状が出るといった苛烈なもの)であった場合、その部分の棚卸しについては「棚上げ」にすることが望ましいです。棚上げにしたものについては、その分野の専門家からの支援を求めるか、将来向き合うべきかもしれないが今はその必要がないし向き合うことが意味あるものにならないタイミングであることを理解し手放してください。
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冊子「HAミーティングハンドブック」
HAミーティングで使用されるハンドブック。2024年1月に改定された最新版。
序文
HAとは?
12のステップ
12の伝統
ミーティングの進め方